目がピントを合わせる仕組みと
老眼の関係

カメラでの撮影では、一つの距離だけにピントを合わせればよいわけではありません。カメラは、広大な風景を撮るとき、テーブルの上の料理を接写するとき、それぞれの距離に応じてレンズを動かすことによって、写す対象物にカメラのピントを合わせる必要があります。
目の中には、カメラと同じようにレンズがあります。それが「水晶体」です。水晶体は目の中にある透明で弾力のある組織で、入ってきた光を屈折させて目の奥にある網膜というスクリーンの上に像を結びます。光が網膜上の正しい一点にきちんと集まったとき、ものははっきりと見えます。
若い頃の私たちの目は、日常生活の中で、さまざまな距離にピントを合わせることで物を鮮明に見ることができます。車を運転しながら遠くの道路標識を確認する、駅のホームで時刻表を見上げる、映画館や劇場でスクリーンや舞台を眺める、それに対して手元のスマホをチェックし、新聞の細かい文字を追い、食卓で向かいに座る家族の顔を見る、など、私たちの目は、一日のうちに数え切れないほどの回数のピント調節を行っています。
目とカメラの大きな違いは、目が自動的にピントを調節できる点です。カメラはレンズを物理的に前後に動かしてピントを合わせますが、目は水晶体の形状を変えることでピントの合う距離を調節します。この変化は周囲の筋肉(毛様体筋)が水晶体を引っ張ったり緩めたりすることで起こり、私たちが意識しなくても瞬時に行われています。
この精巧な仕組みのおかげで、若い頃の私たちの目は遠くの山並みを眺めた次の瞬間に手元のスマホの文字を読む、といったことを自然に行うことができます。この遠くにも近くにもピントを自動的に合わせる能力を調節力と言います。調節力は加齢とともに少しずつ衰えていき、60歳ごろになると、ピントを変える能力はほとんどゼロになってしまいます。


