白内障の検査
ここでは白内障手術に関する検査について説明します。
初診の患者さんは受付にて問診票に質問事項に記載をしていたただきます。その問診票の項目の内容には、主訴(その日に眼科 を受診した理由、症状、メガネやコンタクトレンズの使用歴、アレルギーの有無、既往症、手術の既往の有無などがあります。その後に視力検査などの基本的な眼科検査を行います。 視力検査は視能訓練士などのコメディカルと呼ばれる医師以外の医療スタッフが行います。そのあと眼科医が診察し、白内障と診断されて白内障手術の運びになると、白内障手術に必要な検査をすることになります。
(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」第2版、P37より抜粋・改定)
視力検査
メガネをかけていない裸眼の視力と、メガネやコンタクトレンズなどで遠視、近視、乱視などを矯正したベストの視力とその時の屈折矯正値を測定します。メガネやコンタクトレンズを使っても視力矯正が十分にできない場合は、 何らかの眼科的な疾患の可能性があります。その場合、白内障、角膜疾患、緑内障などの視野が障害される疾患、加齢黄斑変性や糖尿病網膜症などの網膜疾患のいずれか、あるいは複数の要因で視力障害を引き起こしている可能性があります。そのため、さまざまな検査を行なってそれらの疾患がないかを眼科医が診断する必要があります。
眼圧検査
眼圧とは、簡単にいうと目の硬さです。眼圧は房水という目の中の水の流れにより、ある程度一定になるように調節されています。眼圧が一定の範囲を超えると視神経にダメージを受けることで、視野の一部が欠損したり、最終的には視力も障害を引き起こしていることがあります。その状態を緑内障と言います。
大宮七里眼科では複数の方法で眼圧を測定します。ゴールドマン圧平眼圧計は、眼科医が細隙灯顕微鏡に付属のチップで測る方法です。非接触型圧平眼圧計(ノンコンタクトトノメーター)という器械で測る方法は、器械から空気を短時間出して角膜に当てて、その角膜の凹みから眼圧を測定します。
大宮七里眼科では、白内障手術の前には必ず眼圧測定を行います。
視野検査
緑内障が疑われる場合には視野検査や、OCT(光干渉断層計)によって緑内障の程度や進行の度合いを診断します。もし緑内障がある場合にはその治療を開始します。大宮七里眼科ではSLTと呼ばれるレーザー治療も行っています。
また、白内障手術を行う際にも視野検査の結果は重要です。
OCT検査
OCT検査は網膜や視神経の断面図を、体に侵襲なく撮影することができます。大宮七里眼科ではニデック社のRS3000を用いています。OCT検査は網膜の形状や内部の異常を撮影することで、加齢黄斑変性や糖尿病網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、網膜剥離などを診断することができます。またOCTは 視神経の断面図や視神経乳頭周辺の神経線維の厚みを測定することができ、緑内障を早期発見することも可能です。
眼底検査
眼底カメラや眼底鏡を使って眼底(眼球内部の奥)の網膜などに異常が起きていないかを調べる検査です。
基本的には散瞳薬(さんどうやく)を点眼することで瞳孔を開いて検査をします。眼底検査は瞳が開きにくい場合や白内障や角膜の疾患がある場合には隅々まで検査するのが難しくなります。大宮七里眼科ではニコンのOptos Daytonaという超広角走査レーザー検眼鏡を導入しており、そのような場合でも従来に比べてかなり広範囲で眼底検査を行うことが可能となりました。また正常の状態でもOptos Daytonaを使用することにより、より正確に網膜疾患を診断、記録することができます。
眼底検査では視力障害を引き起こすような眼疾患が発症していないかを確認することができます。なお、散瞳薬を用いた場合には検査後数時間は瞳を開いた効果が持続するため、まぶしくなったり、ぼやけた状態になります。お車やバイクの運転などはお控えください。
細隙灯顕微鏡検査
細隙灯顕微鏡検査は眼科医が顕微鏡で目を直接観察する検査です。眼科の検査の中で最も重要で代表的な検査です。
角膜、水晶体、虹彩、網膜、硝子体など、眼球のほとんどの部位の検査を行うことができます。様々な病気についての検査ができます。 水晶体が濁ったり、硬くなったりする状態が白内障と言いますが、この検査で水晶体の状態が分かります。
そこで白内障があると診断された場合は白内障手術を検討することになります。
白内障手術の術前検査
コントラスト感度測定検査・グレア感度検査検査
どこまで明暗の差が判別できるのかの能力をコントラスト感度と言います。 コントラスト感度測定検査では縞状の模様を見ていただき、どの明るさまで縞の判別ができるかを測定します。白内障ではコントラスト感度が低下します。また、白内障手術後にもコントラスト感度を測定することもあります。
同じ機器を用いて、グレア感度を測定することもできます。 光を当てて散乱をさせた状態を作りこの程度見にくくなるかと言う検査です。白内障になると水晶体で光が散乱し、対向車のヘッドライトが眩しく感じることがあります。グレア検査では日常生活でどのくらいまぶしさを感じているのかを測定します。
角膜内皮細胞検査
角膜内皮細胞の数を調べる検査です。
角膜内皮細胞が少ないと、白内障手術後に角膜が濁ってしまい視力障害を引き起こす恐れがあります。そのため事前に、その数を確認して手術の適応有無や適切な時期などを判断することが必要です。
角膜眼球の一番外側の透明な組織です。角膜は約0.5mm程度の厚みがあり、角膜も水晶体と同様に、光を屈折させて網膜(もうまく)に像を映し出す役割を持っています。この角膜は外側から、角膜上皮、ボーマン膜、角膜実質、デメス膜、角膜内皮(ないひ)という5つの層から成り立っています。
角膜内皮は角膜の一番内側にあり、前房という目の前半分を占める部屋に面しています。角膜内皮細胞は六角形の細胞で、シート状にしきつめたようにすき間なく並んでおり、水の排出機能を持っていて角膜内の水分量を調節しています。
角膜内皮細胞の数は密度で表現します。日本角膜学会の分類では、密度の換算で1平方㎜メートル当たり2,000個以上が正常とされています。
白内障が進行し、硬くなってしまった水晶体を小さな傷口から吸引できるように細かく砕くためにはある程度の超音波エネルギーが必要となります。したがってすでに水晶体が硬くなった白内障の症例では、特に早めに手術をする必要があります。白内障が進行して硬くなればなるほど、手術中に角膜内皮細胞が減少する可能性が高いからです。白内障手術では、超音波で砕いた破片や超音波エネルギーが、内皮細胞を傷めてしまうと考えられています。
そしてフェムトセカンドレーザー白内障手術では、通常の眼科医の手による手術に比べ、手術中に使用する超音波量を減らすことができます。したがって、レーザー白内障手術では、通常の手術に比べて角膜への負担が減ります。*これがレーザー白内障手術の大きなメリットのひとつです。
*参考文献 Central Corneal Volume and Endothelial Cell Count Following Femtosecond Laser–assisted Refractive Cataract Surgery Compared to Conventional Phacoemulsification, Ágnes I. et. al, Journal of Refractive Surgery • Vol. 28, No. 6, 2012
(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」第2版、P119より抜粋・改定)
光学式生体計測装置(眼軸長検査)
光学式生体計測装置とは、高い精度で正確に目の長さを計測し、眼内レンズの度数を計算する器機です。光学式生体計測装置が開発される以前は、超音波眼軸長測定装置を使用して、目の長さを測定していました。しかしこの超音波眼軸長測定装置の目の長さの測定精度はそれほど高くなく、ときには大きく眼内レンズの度数が目標と異なることがありました。しかし近年開発された光学式生体計測装置はOCTの技術を利用して100分の1㎜単位でより正確に目の長さを測定することができます。とくに現在もっとも先進的な眼内レンズである多焦点眼内レンズは、通常の単焦点眼内レンズに比べてさらに正確に度数決定をする必要があるため、多焦点眼内レンズをした白内障手術を行うには光学式生体計測装置は必須の検査器機です。
大宮七里眼科では最先端のOCT技術であるスウェプトソースOCTのテクノロジーを融合させた「IOLマスター・モデル700」を導入しています。IOLマスター・モデル700ではそれまでの光学式生体計測装置では使用できない最先端の眼内レンズ計算式も採用されており、いままでの器機よりもさらに正確な眼内レンズ度数計算が期待できます。
(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」第2版、P145より抜粋・改定)
角膜形状解析検査
前眼部3次元OCTは、角膜の前面だけでなく後面もふくめた全体の形状を精密に解析することで、通常のオートレフラクトメーターによる屈折検査よりも、はるかに高い精度で乱視などの度数を計測できます。角膜の厚さを角膜すべての部位で測定することで、レーシックが禁忌となる円錐角膜などの角膜疾患の鑑別もできます。角膜のみならず、虹彩までの距離、虹彩と角膜の角度など、前眼部全体の状態を調べることができる、とても優れた検査です。とくに多焦点眼内レンズによる白内障手術の場合、術前検査として非常に有用な情報を得られます。白内障手術の術前検査としてだけでなく、レーシックの術前検査としても重要です。大宮七里眼科ではTomey社のSS-1000Casiaを採用しています。
(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」第2版、P146より抜粋・改定)
検査は定期的に受けましょう
白内障は加齢によって発症するため誰でもかかる疾患で、放置すると失明に至る危険性もある疾患です。そのため、発症率が高くなる40代を過ぎた方は、定期的に眼科で検査を受け、早期発見・早期治療を徹底することが重要です。
白内障の検査は、短時間ですぐに終わります。検査時の痛みもありません。白内障と診断された場合でも、入院する必要のない「日帰り手術」を受けて完治することができます。
現在、自覚症状がない状態でも、まずは定期的な検査を受けてみましょう。