白内障の初期症状について(身近な生活動作でわかる白内障のサイン)
白内障は進行性の病気で、進み具合に個人差があっても放っておけば悪化する一方です。ひとたび白内障が進行した水晶体は、もとのきれいな状態に自然に戻ることはありません。しかし白内障は眼科クリニックを受診すれば簡単に診断することができます。そして手術で完全に治療することが可能な病気です。
白内障の進行度合いと自覚症状は必ずしも一致しません。つまり自覚症状があまりなくても、白内障が進行していることがあります。
白内障と診断された患者さんが、よく口にするのは「まぶしさ」です。夜、車の運転をしていて、対向車のヘッドライトがやけにまぶしく見えても、「あれは対向車がライトを上げているのだろう」と考える人がいます。ところが、すれ違う車のライトがすべてまぶしいので、相手のせいではなく、自分の見え方のせいですべてのライトがまぶしくなっていたことに気づくのです。
また、快晴の日にゴルフ場に行くとまぶしくてプレーがしにくい、といった声も聞かれます。ゴルフ場には、ただでさえ太陽光がさんさんと降り注ぐ上、芝生や池、バンカー等があり照り返しもきついので、とりわけまぶしさを感じやすい環境といえます。今まではまぶしさを気にすることなくプレーできたのに、違和感を覚えるようになったら、白内障が進行しているかもしれません。
家での何気ない生活動作の中でも、白内障の人がまぶしさを感じるシーンはいくつもあります。例えばベランダで洗濯物を干していて、白いシーツをぱっと広げたときに、思わず目を細めるほどまぶしかった、というケースは少なくありません。ベランダに出るだけでも、天気の良い日は、下からの照り返しで目がくらむこともあるようです。
そのまぶしさが、しばらく動けないほど続いたり、まぶしさを通り越してくらくらと目がくらむ感覚があったりしたら、かなり白内障が進行している可能性があるので要注意です。
まぶしさは、いきなり明るいところへ出たりして、急に多くの光が目に入ってくることで感じやすくなります。光の量はふだん、瞳で調節されており、暗い所では瞳孔が開き、明るいところに出ると小さくなりますが、急な変化があるとその反応が一瞬遅れるのです。
まぶしさそのものは、誰もが今までの生活の中で大なり小なり何度も経験しているでしょう。しかし、白内障によるまぶしさは、そうした瞳孔の反応の時間差によるものとは違います。白内障は、少しずつ変性したタンパク質が蓄積していくことが原因ですが、初期には特に、水晶体の中で変性(=濁っている)部分と正常(=透明)な部分がまざっていて、まだらのようになっています。そこを光が通ると、正常に屈折せず、乱反射しやすくなるのです。それが白内障のまぶしさの原因です。
イメージとしては、目の中で光がちかちかと乱反射するので、まぶしさをとてもきつく感じます。単に明るいものをみたときのまぶしさよりも、ずっと強く感じる人が多いようです。しかも、普通のまぶしさなら瞳孔が小さくなればおさまりますが、白内障は水晶体に問題があるため、なかなかおさまりません。
進行した白内障では、患者さんがまぶしさを通り越して「目がくらむ」と表現することがあります。今、歩いたら危ない! と、しばらく立ちすくんでしまうほどのきつさです。これが繰り返されたら、日常生活を普通に送ることが困難になります。この症状については大ヒットアニメ「おぼっちゃまくん」や「ゴーマニズム宣言」などの作品で有名な漫画家・小林よしのりさんの著書「目の玉日記」のなかで、すばらしいイラストで正確に描写されています。その「目の玉日記」には私(大宮七里眼科院長・山﨑健一朗)のキャラクターも登場します。
特に高齢の方の場合には、白内障で見にくくなると転倒しやすくなります。障害物が見にくくなったり、距離感がつかみにくくなるからです。つまり白内障は単なる目の病気ではなく、ときに骨折や捻挫をして全身に影響を及ぼしたり、生活に大きな支障をきたす可能性があるのです。
(山﨑健一朗著「人生が変わる白内障手術」第3版、66頁、「身近な生活動作でわかる白内障のサイン」から抜粋)
白内障は自然治癒することはありますか?
自分で治すことはできますか?
現代の医療技術では、劣化してしまった水晶体を点眼薬、内服薬で元に戻すことはできません。
現在のところ白内障を治す方法は手術のみです。患者さんが「インターネットで、白内障を治す新しい点眼薬が海外で認可されたと読みました」と言ってきたことがあります。実際にこれらを海外から輸入して白内障を治療することにした人もいます。しかし、これはまったく根拠のない情報です。白内障は手術でなければ治せません。このような宣伝に惑わされないようにしてください。白内障を完治できる唯一の治療法、それは濁った水晶体を取りのぞき、人工の眼内レンズに置き換えること、つまり、白内障手術のみです。
ただし、白内障の進行を遅らせる点眼薬はあります。公的保険が適用されます。若年者の初期の白内障で、視力の低下がなければ、その点眼薬で様子を見ることもあります。そのような患者さんから「白内障予防の点眼薬を続けていれば、手術をしないですみますか?」と聞かれることがあります。白内障予防の点眼薬には、完全に白内障の進行を止めるほどの効果はありません。したがって白内障の進行予防の点眼薬を使用していても、白内障が進行して手術を受けなければならない場合もあります。
「目に効く」とされるサプリメントも出回っていますが、それらで白内障が改善することはありません。繰り返しになりますが、白内障を治療する方法は白内障手術しかありません。
(山﨑健一朗著「人生が変わる白内障手術」第3版、83頁、「目薬、サプリメントでは完治しないため、白内障の治療は、手術のみ」から抜粋)
最近少し見にくい感じもしますが、まだまだ車の運転はできています。
白内障手術は受けなくてはいけないでしょうか?
これは車の運転をする人の話ですが、白内障で視力が落ちていても、「自分はまだまだ車の運転も支障なくできているので、視力が悪いはずがない」と思い込んでいるひとがいます。しかし白内障で視力がかなり低下していても、車の運転は出来てしまうのです。
あるいは、「自分は仕事で(あるいは家族を送り迎えするためなどの理由で)車をどうしても運転しなければいけない」という理由で、視力低下の自覚があっても無理に車の運転をしている人がいます。「目が見にくくなっているので、昼間、家の近所しか運転しないようにしている」という人もいますが、交通事故の多くは家の近所で起きています。慣れている道路だから視力が低下していても運転をしていい、ということではないのです。
白内障で視力が低下している人たちは、事故を起こす前に白内障手術を受けて、視力が改善するまで、車の運転はすべきではありません。
白内障が進行して視力が落ちているのに、「自分は免許の書き換えでの視力検査でも通ったので、視力は絶対に大丈夫だ」というひともいます。免許の書き換えは数年に一度であり、書き換えの間の時期に白内障が進行して視力が低下することも、稀ではありません。視力が低下している状態での車の運転は、事故によって他人を傷つけたり、場合によっては人の命を奪ってしまう可能性もあります。高齢者に対しては運転免許の書き換えで高齢者講習というシステムが新たに導入され、書き換えが厳しくなりましたが、それでも高齢者による交通事故は大きな社会問題となっています。
高齢者の方で、とくに車の運転をする方は、夜間や悪天候で見にくい、遠くの標識や道路のラインが見にくいなどの症状が少しでもあれば、すぐに眼科を受診することをお勧めします。
(山﨑健一朗著「人生が変わる白内障手術」第3版、72頁、「車の運転・よく見えているという思い込み」から抜粋)