白内障手術には、どのような種類がありますか?
白内障手術には2つの方法があります。
眼科医の手によるマニュアル手術と、フェムトセカンドレーザーを使ったレーザー白内障手術です。
人の手によるマニュアル手術の場合には、眼科医が自分の目で見ながら、目測で目の中の距離や大きさ、位置を判断し、手を使って眼球の内外に作る傷口を小さな針やピンセットのような器械でつくります。
しかし、人の目で見ながら手でそれらの器械を非常に細かく動かさねばならない動作の精度には限界があり、さらには狭い空間のなかでの作業なので、白内障手術はとても難しい作業です。
それに対して、フェムトセカンドレーザー白内障手術ではレーザーが精密、正確に組織を切開します。
レーザー白内障手術では、眼科医の目の代わりにOCT(光干渉断層計)で立体的に構造を画像化し、眼科医の手の代わりに超短時間パルスのフェムトセカンドレーザーで組織の切開を行います。
その結果、レーザー白内障手術では、白内障手術後の結果に重要な影響を及ぼす水晶体前嚢切開を、より確実に、人の手による手術よりも正確に位置、大きさで行うことができることが複数の医学論文によって証明されています*。
私(大宮七里眼科院長・山﨑健一朗)の著書『人生が変わる白内障手術 第2版』(幻冬舎メディアコンサルティング、2020年)では、そのさまざまなメリットについて詳しく紹介しています。
詳しくは、本著の142ページ「メスを使わないレーザー白内障手術の登場」の項を参照してください。
*参考文献:Femtosecond laser capsulotomy and manual continuous curvilinear capsulorrhexis parameters and their effects on intraocular lens centration.
Kránitz K, Takacs A, Miháltz K, Kovács I, Knorz MC, Nagy ZZ.
J Refract Surg. 2011 Aug;27(8):558-63. doi: 10.3928/1081597X-20110623-03. Epub 2011 Jun 30.
白内障手術で使用する眼内レンズには、どのような種類がありますか?
白内障とは、目の中の水晶体が濁ったり、硬くなったりする状態です。
白内障手術では、その濁った水晶体を取り除き、その代わりに人工の眼内レンズを挿入します。
眼内レンズは年々進歩をしており、さまざまなタイプの眼内レンズがありますが、大きく分けて単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの2種類があります。
単焦点眼内レンズを使用する通常の白内障手術では、手術のあと、あらかじめ決めた一定の距離でしか焦点が合いません。
一般的には、単焦点眼内レンズによる手術の場合には遠方に焦点を合わせるので、手元の活字をよむときなどは必ず老眼鏡が必要となります。
老眼鏡をかけると今度は遠くが見えにくいので、遠くを見るときにはいちいち老眼鏡をはずさなければいけません。
すなわち、単焦点眼内レンズでは、このような老眼の状態はまったく治らないということです。
それに比べて、多焦点眼内レンズでは、遠くと手元の広い範囲の距離にピントが合います。
したがって多焦点眼内レンズでは、メガネが必要となる場面がほとんどありません。
多焦点眼内レンズでは、さまざまな場面で焦点の合いやすい視力となり、豊かな生活を営むことができます。私の著書『人生が変わる白内障手術 第2版」では、多焦点眼内レンズのメリットについて詳しく紹介しています。
詳しくは、本著の206ページ「単焦点眼内レンズの限界」と209ページ「多焦点眼内レンズの登場」の項を参照してください。
白内障手術で使う眼内レンズの度数は、どのように決めるのでしょうか?
従来の白内障手術では、単焦点眼内レンズしか選択肢がありませんでした。
それに対して、近年開発された多焦点眼内レンズは、日常生活を便利にするために開発されました。
このような眼内レンズの進歩以外にも、眼内レンズの度数計算に使用する光学式生体計測装置の進歩が、白内障手術後の患者さんの視力を大きく向上されることに貢献しています。
それぞれの目にあった眼内レンズの度数は、人によって異なります。
眼内レンズの度数の選択は、さまざまな機器を組み合わせて行いますが、主に目の長さを正確に測定する光学式生体計測装置を用います。
とくに多焦点眼内レンズを用いた白内障手術を行うには、眼内レンズの度数計算を行う眼軸の測定には高い精度が求められるため、光学式生体計測装置が必須です。
光学式生体計測装置は、角膜から網膜までの目の長さを100分の1㎜単位で正確に測定することで、白内障手術で挿入する眼内レンズの計算を行うことができる検査機器です。
以前は超音波で眼軸を測定する器機が主流でしたが、精度が低いものでした。
それに対して現在では赤外線にて測定する光学式の器機が主に用いられています。
当院では、多焦点眼内レンズを希望する症例に対しても最適な眼内レンズの度数を計算するために、2008年の開業当初から、光学式生体計測装置であるIOLマスター・モデル500を導入していました。
さらに2014年には光学式生体計測装置であるIOLマスター・モデル700にアップグレードをしました。
IOLマスター・モデル700ではスウェプトソースを用いて眼軸を計測することにより、いままでの器機よりもさらに正確に眼軸を測定することができます。
2020年には、アルゴスを導入しました。アルゴスはIOLマスター・モデル700とは異なるアプローチ(セグメント方式)で最適な眼内レンズ度数計算を行う機器です。
アルゴスは角膜、水晶体、硝子体といった眼内の構造の屈折度数をそれぞれ最適化することにより、従来の光学式生体計測装置よりも精度を上がるように工夫されています。これをセグメント方式といいます。
さらに大宮七里眼科では、より正確な眼内レンズ度数計算を行えるように、角膜のカーブを精密に検査する前眼部OCT器機であるSS1000 (Casia、カシア)を導入しています。
カシアは通常の検査器機で測定できる乱視だけでなく、角膜の全範囲のカーブや厚みを測定できます。
このカシアは円錐角膜などの角膜疾患の鑑別にもたいへん有用なので、大宮七里眼科では白内障手術の術前検査として活用しています。
このような検査機器の発達もあり、大宮七里眼科で行われている多焦点眼内レンズによる白内障手術の精度は、年々高まっています。
ここで述べた白内障手術前の検査機器の進歩と多焦点眼内レンズについては、私(大宮七里眼科院長・山﨑健一朗)の著書『人生が変わる白内障手術 第2版』で詳しく記しています。詳しくは、本著の242ページ「多焦点眼内レンズの度数決定には最先端の眼軸計測器機が必要」をご参照ください。