すでに国民健康保険による白内障手術を受けて単焦点眼内レンズを入れました。その後多焦点眼内レンズについて知りました。再手術を受けて多焦点眼内レンズに入れ替えることはできますか?
白内障手術で使用する眼内レンズは一生使い続けることができます。言い換えれば、取り出して交換することは考えられていません。
また、いかななる手術も合併症のリスクを伴います。
これらの理由から、よほどのことがない限り眼内レンズを入れ替える手術を行うことはありません。
つまり眼内レンズは一度入れると一生使うことになるので、白内障手術をうける場合には事前に多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズの違いなど、手術の種類や方法の違いについて、よく調べて理解する必要があります。
特に眼内レンズについては多焦点眼内レンズによる白内障手術をご希望の場合には多焦点眼内レンズ手術を行っている眼科医と相談して決めていただきたいと思います。
もし今かかっている眼科クリニックが単焦点眼内レンズによる手術しか行なっていない場合は、多焦点眼内レンズの手術を多く行なっている眼科にも相談することをおすすめします。
また、白内障手術では手術の方法もクリニックによって異なります。従来は眼科医の目と手による方法(マニュアル手術)しかありませんでしたが、現在ではフェムトセカンドレーザー白内障手術という方法もあります。フェムトセカンドレーザー白内障手術はOCTという3次元の目の構造を解析する装置のデータを元に、レーザーによって眼球の内外の組織を正確に切開する方法です。
フェムトセカンドレーザー白内障手術については欧米では広く普及していますが、日本では行なっている病院はほとんどありません。
フェムトセカンドレーザー白内障手術についてもレーザー手術を行っている病院でメリットについて説明を聞いて、納得のいく方法を選択して手術に臨んでいただきたいと思います。
多焦点眼内レンズがいいと聞いたことはありますが、私は高齢者なので不要なのではないかと思いますがいかがでしょうか?
当院を受診される患者さんの中にも、ごくまれですが「もう年だから、多焦点眼内レンズは…」と言われる方がいらっしゃいます。
しかし高齢者ほど家にいる時間が長くなります。
つまり遠くよりも手元を見る機会、時間が増えます。
多焦点眼内レンズは手元や中間距離をよりよく見えるようにするためのレンズですので、高齢者にも十分なメリットがあります。それに対して単焦点眼内レンズでは家の中で常に老眼鏡のような手元を見るためのメガネをかける必要があります。
また、生活環境やライフスタイルなどについてお話をうかがうと、高齢者の皆さんでも多趣味で活動的ですので、術後の便利さ、満足度を考えると多焦点眼内レンズがとてもよい選択肢だと思われる方が大半です。
もちろん若い方にも多焦点眼内レンズがよい選択肢の方が大半ですので、多焦点眼内レンズを選ぶことに関して、年齢は無関係です。
多焦点眼内レンズにはどんなメリットがありますか?
多焦点眼内レンズは、遠距離、中距離、近距離の、ほとんどの距離に焦点が合いやすいレンズです。
単焦点眼内レンズを挿入した場合は、焦点が合う距離が1つなので、それ以外の場所はぼやけて見えてしまいメガネが必要になります。
例えば若い頃に視力が良くてメガネが全くいらない生活だった方が、単焦点眼内レンズによる白内障手術を受けた場合には、若かった頃のような見え方にはならず、ピントの合っていない距離をはっきり見るためのメガネが必要になります。
それに対して多焦点眼内レンズを使用した白内障手術では遠く、中間距離、近くの全ての距離に同時にピントが合うようになるのがメリットです。
多焦点眼内レンズによる白内障術後はほとんどの場合、メガネをかけることはほとんどなくなります。
多焦点眼内レンズによる手術を受ければ老眼鏡もいらなくなりますか?
基本的に多焦点眼内レンズによる白内障手術ではメガネを要らなくすることをゴールにします。
多焦点眼内レンズは近くにも焦点を合わせられるので、術後は多くの場合が老眼鏡のようなメガネをかけなくても手元がはっきり見えるようになります。手術の前は文字が見にくくなって長時間の読書ができなくなったのが手術後は昔のように読書が楽しめるようになった、料理をするときの手元が見やすくなって助かったと多焦点眼内レンズを挿入した患者さんはおっしゃっています。家の中のゴミが見えやすくなって1日中掃除をしている、お化粧もしやすくなって外出の機会が増えた、ピアノやオルガンの楽譜が見えやすくなった、お裁縫ができるようになったという女性もいらっしゃいます。
多焦点眼内レンズには、2つの距離にピントが合う2焦点眼内レンズと3つにピントが合う3焦点眼内レンズやハイブリッド型多焦点レンズ(連続焦点型眼内レンズ)があります。2焦点の場合は遠方と近距離の二箇所にピントが合っていましたが、3焦点やハイブリッド型の場合はそれに加えて中間距離にもピントが合うよう改良されています。
中間距離は目の前から70センチほどの場所です。パソコンのモニター、カーナビ、台所仕事などはこの中間距離にあたります。
大宮七里眼科では2022年5月現在は全例に3焦点眼内レンズやハイブリッド型多焦点レンズ(連続焦点型眼内レンズ)を使用しています。
ただし多焦点眼内レンズを使用しても100%メガネが不要になるとはいえず、低い可能性ではありますがメガネが必要になる場合もあります。
私はほぼ毎日運転するので、3焦点のレンズを検討しようと思いますが、多焦点レンズのデメリットはありますか?
多焦点眼内レンズによる手術の直後は、夜間の車のライトのまわりに光の輪が見えるハローや、光がにじんで見えるグレアという現象を自覚することがあります。
ハローやグリアの感じ方には個人差があり、気になる方もいますが、まったく気にならない方もいます。
しかし多くの場合は手術後3か月から1年ほどでほとんど意識しなくなるレベルまで適応することが多いと言われており、夜間の車の運転にもほとんどの場合も支障はありません。
また、多焦点眼内レンズでは暗所でのコントラスト感度がごくわずか単焦点眼内レンズよりも劣ると言われています。ただし明所でのコントラスト感度はほぼ同等ですので、日常生活で支障のある場合はほとんどありません。
またこれは単焦点眼内レンズのピントの合っている距離だけでの比較の話ですので、単焦点眼内レンズでピントの合っていない距離ではかなりぼやけて見えることに変わりはありません。