ブログ

多焦点眼内レンズの種類とテクニスシナジーについて

local_offerよくわかる白内障

Q:多焦点眼内レンズにも種類があるのでしょうか?

A:多焦点眼内レンズは、登場をしてからも年々進歩しています。

多焦点眼内レンズは、現在複数のメーカーからさまざまな種類のものが出ています。
2007年に日本で最初に多焦点眼内レンズが認可を受けたときには、2つの2焦点眼内レンズのタイプだけでしたが、近年では数種類のタイプが認可を受けています。

2焦点の眼内レンズの発売以降もっとも注目を浴びた多焦点眼内レンズは、3焦点眼内レンズです。

私は、2016年9月からファインビジョンの使用を開始しました。
当時は、3焦点眼内レンズといえばファインビジョンしか選択肢がありませんでした。
2019年、パンオプティクスという3焦点眼内レンズが、国内でも認可を受けました。
ファインビジョンもパンオプティクスも、乱視がある場合にはそれを改善することもできます。

2021年3月現在、最も使用されている多焦点眼内レンズは、おそらく3焦点の多焦点眼内レンズです。
2焦点の眼内レンズでは、手元の視力は単焦点の眼内レンズよりもはるかに良く見えます。

それでは、中間距離の視力はどうでしょうか?
これはあまり知られていないことですが、実は2焦点眼内レンズは、単焦点眼内レンズよりもよく見えます。
つまり2焦点の眼内レンズは、単焦点眼内レンズよりも、手元も中間距離もよく見えるのです。

しかし3焦点眼内レンズでは、2焦点眼内レンズをさらに上回る中間距離視力を得ることができます。
これまでの2焦点の多焦点眼内レンズに比べて、中間距離の作業であるコンピューターや台所での料理など見え方がさらに改善しました。

近年は、若い方だけでなく高齢者の方もコンピューターを使ってインターネットを使う人はめずらしくありません。
以前は高齢者がコンピュータでインターネットや電子メールを日常的に使用する機会は少なかったと思いますが、現在はどの世代の人もコンピューターを使うことがあります。
3焦点眼内レンズは、そういったニーズに応えるために開発されました。
3焦点レンズは2焦点レンズよりも、生活の質をよりあげることができます。

大宮七里眼科では、3焦点眼内レンズであるファインビジョンやパンオプティクスに力を入れています。
2016年9月から2021年3月までに、それぞれ800例以上(ファインビジョンとパンオプティクスの使用症例数は合計1600例以上)に使用し、すべて良好な成績を得ています。


Q:テクニス・シナジーとはどのような多焦点眼内レンズなのでしょうか?

A:テクニス・シナジーという多焦点眼内レンズは、2020年に日本国内で認可を取得しました。
テクニス・シナジーは3焦点眼内レンズに近いコンセプトの多焦点眼内レンズですが、ファインビジョンやパンオプティクスとは、基本的な構造がやや異なります。

テクニス・シナジーはジョンソン・エンド・ジョンソン(株)の製品です。
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、テクニス・マルチフォーカルという回折型と呼ばれるタイプの2焦点眼内レンズと、テクニス・シンフォニーというEDOF(焦点深度拡張型レンズのこと。「イードフ」とも読みます)と呼ばれるタイプの多焦点眼内レンズを出しています。

テクニス・マルチフォーカルは、遠近の2焦点にピントが合っているレンズ。テクニス・シンフォニーは遠くから中間距離にだけ焦点が合っているレンズです。
テクニス・シナジーは、これらのレンズを組みあわせたデザインとなっており、遠く、中間、手元のすべてに焦点を持つデザインとなっています。

私(大宮七里眼科院長・山﨑健一朗)は2020年秋、国内に先駆けてテクニスシナジーの使用を開始し、2021年3月までに多数使用しました。
テクニス・シナジーについてのデータをすべて解析し、その特徴についてはかなりの研究を行っております。

テクニス・シナジーは、日本国内ではまだほとんど使用されていません。
テクニス・シナジー、ファインビジョン、パンオプティクスなど、新しいタイプの多焦点眼内レンズについては、ぜひ大宮七里眼科にお尋ねください。


Q:インターネットを検索すると、たくさんの多焦点眼内レンズの記事があります。これらの記事は事実でしょうか?

A:眼内レンズの情報は、インターネットで検索するとたくさん出てきます。

勉強熱心な患者さんの中には、あらかじめ時間をかけて情報収集を行い、「このレンズを使ってほしい」と医師に希望を伝える人もいらっしゃいます。

しかし、インターネットの情報量には限りがあります。
インターネット情報を読んで「これがいい」と思ったレンズがご自身の目の状態や生活に合うとは、必ずしも限りません。

また、他院のホームページには、現在は日本で全く使われなくなった多焦点眼内レンズについての記載があると聞いております。

たとえば、とある日本国内未認可の多焦点眼内レンズは、数年前の発売当初は大変素晴らしい視力が得られ、「ハローやグレアが非常に少ない」などの触れ込みで、日本でも何人かの眼科医が使用しました。

私(山﨑健一朗院長)はその眼内レンズのデータを海外学会で見ておりましたが、従来の多焦点眼内レンズよりも優れた点はないと考え、自らの判断で一例もその眼内レンズの使用をしたことがありません。
しかしのちに、その未認可の多焦点眼内レンズの結果は芳しいものではなく、すべての眼科医が使用を中止したと聞いています。

しかし、その患者さんによると、そのような成績が悪くて使われなくなった多焦点眼内レンズについて、いまだにサイト内にあたかも素晴らしい機能を持ったレンズであるかのような内容の記載をしているとのことです。
このようなこともあるので、そのような国内未認可の多焦点眼内レンズの記事については、頭から信用しないことをお勧めします。

2021年3月現在、日本国内で未認可のイスラエル製の「5焦点眼内レンズ」の記載が他院のサイトに記載してあることを患者様から聞いております。
実際、「大宮七里眼科では5焦点眼内レンズを使用しているか」との質問も寄せられています。

しかし「5焦点眼内レンズ」についても、先ほどとりあげた現在は使われなくなった多焦点眼内レンズと同様、全くデータがありません。(2021年3月現在)
私は、このような眼内レンズを100%否定するわけではありませんし、もしかしたら「5焦点眼内レンズ」は従来の眼内レンズよりも優れた点があるかもしれません。
しかし焦点数が多いことで、ハローやグレア強い、視力が出にくい、あるいは他の合併症があるなどの事実が、これから明らかになるかもしれません。

少なくとも2021年3月現在は、それらを証明するだけの十分なデータがありません。
また、イスラエルという西側諸国とは異なる医療システム、司法制度の国の製品なので、万が一の事故や製品の不備があった場合の補償について、予測がつかないのです。
これらの使った手術を他院で受ける際には、「5焦点眼内レンズ」はそのような可能性があることを理解してお受けになることをおすすめします。

それに対して、大宮七里眼科で私が多数使用をしているパンオプティクスやテクニス・シナジーは日本国内で使用を認可されており、厚生労働省の厳しい検査をクリアしております。

私は、これまで多焦点眼内レンズを3,950例の手術で使用しました*。
常に多焦点眼内レンズのデータ、情報を収集し、全力で研究に取り組んでおります。

多焦点眼内レンズの選択は、人生を左右する大きな問題です。
インターネット上の記事の中には、事実かどうかを確認できない内容や、主観的な内容の記事が見受けられます。
多焦点眼内レンズやレーザー白内障手術の正確な情報について、私は著書『人生が変わる白内障手術 第2版」に記載した内容に、全責任を負っています。
本書の248ページ「インターネットの眼内レンズの記載には偏りがある」に詳細を記載していますので、ぜひご参照ください。

*2008年9月から2021年2月までの期間


Q:多焦点眼内レンズの焦点は何センチに合っているのでしょうか?

A:インターネット上に氾濫する情報の中に、「多焦点眼内レンズは33センチ、40センチ、50センチの距離に合った様々な種類のものがあると書いてある。自分は50センチ(あるいは他の距離)に正確に合わせてほしい」とリクエストしてくる患者さんが増えました。

インターネット記事を読んだ方の中には「多焦点眼内レンズは、誰でも1センチ単位で距離を合わせることができる」と誤解されている方もいるようです。

眼科医としてはぜひ期待にお応えしたいのですが、残念ながら、現段階では術後の距離を正確に1センチ単位で合わせることができるとまではいえません。
眼内レンズによって理論上の焦点の合っている距離は、あくまで目安と考えてください。

たしかに、現在は複数の多焦点眼内レンズが発売されています。
その中には、33センチ、40センチ、50センチといったさまざまな距離に合わせたことを想定してデザインされています。
しかし、それはあくまで理論上の話であり、実際に目の中に眼内レンズを入れた場合の距離とは必ずしも一致しないのです。

目の構造には個人差があるうえに、焦点の合う距離にはさまざまな要素があり、手術で同じように同じレンズを入れても、結果の度数にはある程度の差があります。

また、眼内レンズの作成度数の単位には間があります。市販の靴のサイズが0.5センチ刻みであるのと同様です。
その度数の単位の中で、一番その目にあった度数を選択します。よって、すべての人に、距離を正確な1センチ単位で合わせることはできません。

しかし、それを聞いてがっかりする必要はありません。その理由は2つあります。

まず、眼内レンズ度数計算の機器および度数計算式の進歩により、ひと昔前に比べて眼内レンズの度数計算ははるかに高い精度で行うことが可能になったこと。
もう一つの理由は、白内障手術後には眼内レンズの焦点の合っている距離以外は全く見えないわけではなく、人間の脳にも焦点を合わせる機能が備わっており、見えやすい距離にはある程度の幅があることです。

とはいえ、人間の脳が新しい視力に慣れるには、時間を要することもあります。
手術の直後に少し見にくい、あるいは手術前とは違った距離にあっている感覚があっても、大半の場合は時間で慣れていきます。

詳しくは私の著書『人生が変わる白内障手術 第2版」の246ページ「眼内レンズの焦点距離はあくまで目安」を参照してください。

監修医師 山﨑 健一朗

院長紹介

院長資格

  • 日本眼科学会認定 眼科専門医
  • 日本で初めてフェムトセカンドレーザー白内障手術を開始
  • 2017年 著書「人生が変わる白内障手術」出版
  • 多焦点眼内レンズ使用症例を4,958件以上
  • フェムトセカンドレーザー白内障手術4,752件以上
-->
TOPへ