円錐角膜の原因・症状・治療
院長 山﨑 健一朗
院長プロフィール
- 日本眼科学会認定 眼科専門医
- 日本で初めてフェムトセカンドレーザー
白内障手術を開始 - 2017年 著書「人生が変わる白内障手術」出版
- 多焦点眼内レンズ使用症例を4,958件以上
- フェムトセカンドレーザー白内障手術4,752件以上
円錐角膜に関するお悩みや不安を抱えている方は多くいます。物がぼやけて見えたり、眩しさや眼の疲れを感じたりした経験のある方もいるのではないでしょうか。この記事では、円錐角膜の原因や症状、治療法について解説します。
円錐角膜とは
円錐角膜とは、角膜中心部が薄くなり、眼圧によって円錐状に突出してしまう疾患のことを指します。角膜は、目の表面にある透明な膜で、光を屈折させて網膜に焦点を合わせる重要な役割を担っています。
円錐角膜では、角膜の5層構造のうち、特に角膜実質の菲薄化が顕著です。この変化により、角膜が本来の曲率を維持できなくなり、不規則な形状に変形してしまいます。その結果、光の屈折が乱れ、視力低下や乱視などの症状が現れます。
円錐角膜の発症率と好発年齢
円錐角膜の発症率は、およそ300〜400人に1人と言われています。この疾患は、主に10代から20代前半にかけて発症することが多く、一般的には30代で進行が停止するとされています。
ただし、数ヶ月という短期間で急速に進行する例や、40-50代になって発症する例もまれではありません。円錐角膜は若年層に多い疾患ですが、あらゆる年代で発症する可能性があることに注意が必要です。
円錐角膜の特徴
円錐角膜は、多くの場合両眼性に発症します。しかし、左右の目で進行度に差異がみられることが特徴の一つです。片方の目だけが重症化し、もう片方の目は軽症にとどまるケースもあります。
また、円錐角膜の初期症状として、眩しさや光過敏、軽度の視力低下、物が二重に見えたり歪んで見えたりする乱視などが挙げられます。病状が進行すると、角膜の突出がさらに顕著になり、デスメ膜が破裂して急性の角膜浮腫を引き起こし、角膜が白濁することもあります。
円錐角膜は進行性の疾患であり、適切な治療を行わないと角膜が極端に薄くなって裂傷を生じ、強度の混濁を伴う末期の状態に至ってしまいます。そのため、早期発見と進行予防が予後の改善につながる重要なポイントとなります。
円錐角膜の原因
円錐角膜の原因を考える際、まずは角膜の構造と円錐角膜の関係性を理解することが重要です。そして、円錐角膜のリスク要因を知ることで、発症を予防する手がかりが得られるでしょう。
角膜の構造と円錐角膜
角膜は、目の最前面に位置する透明な組織であり、光を屈折させて網膜に像を結ぶ重要な役割を担っています。角膜は、角膜上皮細胞、ボーマン膜、角膜実質、デスメ膜、角膜内皮細胞の5層から構成されています。
眼の中にはコラーゲンを溶かしてしまう「コラゲナーゼ」という酵素があります。コラゲナーゼが角膜中のコラーゲンを溶かしてしまうことで角膜実質の構造が脆弱化し、角膜の形状が変化します。これにより、光の屈折が乱れ、視力低下や乱視などの症状が引き起こされます。また、両眼性に発症することが多いですが、左右で進行度に差異がみられることもあります。
円錐角膜のリスク要因
円錐角膜の原因は現代の医学でもはっきりわかっていません。円錐角膜の発症には、いくつかの要因の関与が指摘されています。以下に、主なものを挙げます。
- 遺伝性:円錐角膜には遺伝的な要因が関与していると考えられており、家族内発症が報告されています。
- アトピー性皮膚炎:アトピー性皮膚炎を有する患者さんでは、円錐角膜の発症リスクが高いことが知られています。
- 長期コンタクトレンズ使用:長期間のコンタクトレンズ使用と円錐角膜の関連が報告されています。
- 目を擦る習慣:頻繁に目を擦る習慣は、角膜に物理的なダメージを与え、円錐角膜の発症リスクを高めます。
これらのリスク要因を理解し、可能な限り回避することが、円錐角膜の発症予防につながります。
円錐角膜は、早期発見と適切な治療介入が重要な疾患です。症状が軽度の段階で発見し、進行を抑えることで、視機能の維持が期待できます。
円錐角膜の症状
円錐角膜の症状は、病期によって異なります。ここでは、初期から末期までの症状について詳しく解説します。
円錐角膜の初期症状
円錐角膜の初期症状は、比較的軽度なものが多いです。主な症状としては、眩しさや光過敏、軽度の視力低下などが挙げられます。また、物が二重に見えたり、歪んで見えたりする乱視の症状も現れることがあります。
初期の段階では、症状が軽微であるため、自覚することが難しい場合もあります。
円錐角膜の中期症状
円錐角膜が進行すると、中期の症状が現れます。この段階では、角膜の突出がさらに進み、視力低下が悪化します。また、デスメ膜(角膜の内側にある薄い膜)が破裂する可能性もあります。
デスメ膜が破裂すると、角膜に水分が流入し、急性の角膜水腫を引き起こします。これにより、角膜が白濁し、視力が大幅に低下する場合があります。中期の症状が現れた場合は、速やかに眼科医に相談し、適切な治療を受けることが重要です。
円錐角膜の末期症状
円錐角膜が末期まで進行すると、角膜の混濁が強くなり、視力が著しく低下します。また、角膜が非常に薄くなり、裂傷を起こしやすくなります。
末期の症状が現れた場合、角膜移植などの手術的治療が必要になることがあります。しかし、早期発見と適切な治療により、進行しにくくすることができます。
円錐角膜の症状は、病期によって異なります。初期では軽度の症状が多いですが、中期から末期にかけて、視力低下や角膜の混濁、裂傷などの重篤な症状が現れます。
円錐角膜の診断
円錐角膜の診断には、いくつかの重要な検査があります。これらの検査を組み合わせることで、円錐角膜の進行度や重症度を正確に把握することができます。
視力検査
視力検査は、円錐角膜の診断において最も基本的な検査の一つです。円錐角膜が進行すると、近視や乱視が増加し、視力が低下します。視力検査では、裸眼視力と矯正視力の両方を測定し、視力低下の程度を評価します。
細隙灯顕微鏡検査
細隙灯顕微鏡検査は、角膜の状態を詳細に観察する検査方法です。この検査では、角膜の形状や透明度、表面の状態などを詳しく評価します。
円錐角膜の場合、角膜中心部の菲薄化や円錐状の突出が観察されます。また、角膜の混濁や血管新生、デスメ膜の破裂などの所見が認められることもあります。これらの所見は、円錐角膜の重症度を判断する上で重要な情報となります。
角膜形状解析検査
角膜形状解析検査は、角膜の形状を定量的に評価する検査方法です。この検査では、角膜地形図(角膜トポグラフィー)と呼ばれる特殊な装置を用いて、角膜の曲率や厚さを詳細に測定します。
円錐角膜の場合、角膜地形図上で特徴的な所見が確認できます。具体的には、角膜中心部の急峻な曲率変化や、非対称性の増加などが観察されます。これらの所見は、円錐角膜の診断や進行度の評価に非常に有用です。
円錐角膜の治療
円錐角膜の治療法は、その進行度合いによって異なります。初期から中期の段階では、主に非手術的な治療が選択されますが、病状が進行した場合には手術的な治療が必要となります。
ここでは、円錐角膜の各種治療法について詳しく解説していきます。
非手術的治療(メガネ・コンタクトレンズ)
円錐角膜の初期段階では、メガネやソフトコンタクトレンズによる視力矯正が有効です。これらの方法は、歪んだ角膜の形状を補正し、視力を改善することができます。
病状が進行し、メガネやソフトコンタクトレンズでは十分な視力が得られない場合には、ハードコンタクトレンズの使用が検討されます。ハードコンタクトレンズは、より強い矯正力を持ち、角膜の形状を整えることができます。
ただし、コンタクトレンズの使用には注意が必要です。長期間の使用は、角膜の健康を損なう可能性があるため、目の状態に気を配りながら着用しましょう。
角膜クロスリンキング
角膜クロスリンキングは、比較的新しい手術法で、円錐角膜の進行を抑制することができます。この手術では、角膜にリボフラビン(ビタミンB2)を滴下し、波長365nmの紫外線を照射します。
この処置により、角膜のコラーゲン線維間の結合が強化され、角膜の強度が増加します。その結果、角膜の突出を抑え、進行を遅らせることができます。
角膜クロスリンキングの適応は、下に示す条件を満たす場合です。
- 現在も進行が続いていること
- 角膜の厚さが規定値を上回っていること
- 妊娠中や授乳中でないこと
- 活動性のあるほかの疾患がないこと
- 本人の意思
手術後は、一時的な異物感や痛み、眩しさを感じることがありますが、徐々に快方に向かいます。手術を受ける際は、ご自身に適しているか、眼科医と相談しながら判断する必要があります。
角膜内リング
角膜内リングは、半円弧状のリングを角膜内に挿入する手術法です。このリングにより、角膜の形状が矯正され、近視や乱視が改善されます。
角膜内リングの挿入には、角膜厚が400μm以上あることが条件となります。リングを挿入した後は乱視がやわらぎ、コンタクトレンズを装着したりメガネで矯正を行えるようになります。ただ、角膜の形状は手術を終えて2~3ヶ月かけて徐々に変化していくので視力が安定するまでは時間を要します。
ただし、角膜内リングは全ての患者に適しているわけではないので、適応の判断は、眼科医との相談の上で慎重に行う必要があります。
角膜移植
円錐角膜が重症化し、他の治療法では対応できない場合には、角膜移植が検討されます。角膜移植は、患者の角膜を円形に切除し、ドナーの角膜と置換する手術です。
角膜移植は、視力の大幅な改善が期待できる一方で、手術のリスクも高くなります。拒絶反応や感染症などの合併症の可能性があるため、術後の慎重な経過観察が必要です。
また、角膜移植には長い回復期間を要します。完全な視力の安定には、数ヶ月から1年以上かかる場合もあります。
円錐角膜治療の注意点
円錐角膜の治療において最も重要なのは、早期発見と適切な進行予防です。定期的な眼科検診により、病状の進行を監視し、適切なタイミングで治療を開始することが求められます。
また、円錐角膜の患者には、レーシック手術は適応外です。レーシック手術は角膜を薄くするため、円錐角膜をさらに悪化させる可能性があります。
円錐角膜への対処法
円錐角膜は、角膜中心部が薄くなり、眼圧により円錐状に突出する疾患です。ここでは、円錐角膜への効果的な対処法について説明いたします。
早期発見の重要性
円錐角膜の早期発見は、予後改善に大変重要です。主に10代から20代前半で発症し、一般的に30代で進行が停止すると言われていますが、数ヶ月での急速進行や40-50代での発症例も報告されています。
初期症状としては、眩しさ、光過敏、軽度の視力低下、物が二重に見えたり歪んで見えたりする乱視などがあります。これらの症状に気づいたら、速やかに眼科専門医の診察を受けることをお勧めいたします。
進行予防のための生活習慣
円錐角膜の進行を予防するためには、適切な生活習慣が欠かせません。長期のコンタクトレンズ使用は控えめにし、目を擦る習慣があればそれを改善することが大切です。また、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患がある場合は、それらのコントロールも重要となります。
遺伝的な要因も指摘されているため、家族に円錐角膜の方がいらっしゃる場合は特に注意が必要です。
定期検診の必要性
円錐角膜は、早期段階であれば、メガネやソフトコンタクトレンズで視力の改善が見込めますが、進行すると角膜突出が進み、デスメ膜破裂や急性水腫による角膜白濁、視力低下の悪化などが生じる可能性があります。
末期になると強度の混濁や角膜の菲薄化、裂傷などが起こりうるため、症状が安定している場合でも、定期的な検査を受けることが非常に大切です。視力検査、細隙灯顕微鏡検査、角膜形状解析検査などを行い、病状の進行具合を詳しく確認します。
円錐角膜の治療には、メガネやコンタクトレンズによる矯正から、角膜クロスリンキングや角膜内リング、角膜移植などの手術的治療まで、様々な選択肢があります。しかしながら、病状が進行するほど治療の選択肢は少なくなってしまいます。
まとめ
本記事では、円錐角膜の原因、症状、治療法について詳しく解説してきました。円錐角膜は、角膜中心部が薄くなり、眼圧により円錐状に突出する進行性の疾患です。早期発見と適切な治療介入が、症状の改善と進行抑制に重要な役割を果たします。
円錐角膜は、適切な治療とケアを継続することで症状の改善が期待できる疾患です。目に違和感がある場合は、躊躇せずに眼科専門医にご相談ください。
