「多焦点は見え方が悪い」といった誤った情報が今も伝わっている
多焦点眼内レンズが普及しないもう一つの理由として、「多焦点は見え方が悪い」といった誤った情報が今も伝わっていることがあります。
「多焦点眼内レンズは見え方が悪い」「ハロー・グレアがひどくて使えない」といった意見を聞いたことがある方も多いかもしれません。
インターネットで「多焦点眼内レンズ 失敗」「多焦点眼内レンズ 見えない」「多焦点眼内レンズ ぼやける」などで検索すると情報が上がってきます。
実際、十数年前に多焦点眼内レンズが日本で認可を受けた頃の前後には、多焦点眼内レンズの適応範囲の診断基準が確立されておらず、多焦点眼内レンズを使用すべきでない症例にも使われていた、また多焦点眼内レンズの昨日が現在使用されているものほどではなかったことも事実です。
多焦点眼内レンズの機能は、この10〜15年さらに飛躍的に進化しました。テクノロジーの進歩によって、より自然な見え方や快適な視界が得られる新しい設計のレンズが続々と開発され、現在では「見え方が悪い」という症例はきわめて稀になっています。
それにもかかわらず、いまだに古い情報や、過去にトラブルのあった一部の症例だけがクローズアップされて語られることが少なくありません。それは、医師側の経験や情報が古いままで止まっていることに起因しているケースもあります。
また、多焦点レンズの特性や適応についての丁寧な説明や正確な適応判断がされないまま導入された場合、期待とのギャップが不満につながることもあります。つまり、「多焦点レンズが悪い」のではなく、「適切な選定・手術・説明がされていない」ことが原因だったのではないかと考えています。
患者にとって大切なのは、最新の知識と技術に基づいた正しい情報を得ることです。
「多焦点は見え方が悪い」といった声をうのみにせず、ぜひ現在の技術や選択肢を知っていただきたいと思います。多焦点眼内レンズは、正しく選ばれ、正確に手術されれば、生活を大きく変えるほどの力を持った選択肢なのです。